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就寝前の食事はモチリンの働きを弱くして便秘を招く

就寝前の食事はモチリンの働きを弱くして便秘を招く

忙しい現代人の中には、終電ぎりぎりまで仕事をしている人がいます。そしてその多くは、帰宅して夕食を済ませた後、お風呂に入って寝るという生活を送ります。私の知り合いの中にも、「23:00頃に帰宅して、それから夕食。お風呂に入って1:00前に就寝」という方がいます。

 

このように「寝る前に食べる」という生活をしていると便秘を招きやすいことが分かっています。そこで今回は、就寝直前の食事がなぜ便秘に繋がりやすいか解説していきます。忙しい社会人にとっては気になる内容と思いますので、しっかり理解しておきましょう。

 

朝排便するために必要なこと

朝、快適に排便するためには以下に示したような条件を満たす必要があります。

 

1. 就寝3時間前までに夕食を済ませていること
2. 就寝前は心を落ち着かせ、副交感神経(リラックスしているときに働く自律神経)を優位にしていること
3. 6時間以上の十分な睡眠時間を確保すること
4. 起床時に空腹であること
5. 起床後にコップ一杯の水を飲んで胃に刺激を与えること
6. 落ち着いて朝食を摂ること

 

眠っている間の蠕動運動(ぜんどううんどう:食べた物を肛門方向へと移動させる収縮運動)は、昼間より弱くなっています。それでも1〜3の条件が揃っていれば、便は確実に肛門方向へと移動していき、直腸の直前にあるS状結腸(大腸の後半部分にあるS字状に曲がった部分)に滞留します。

 

※ 大腸は小腸から近い順に「盲腸」、「結腸」、「直腸」の3つの部分から成ります。そのうち大腸の大部分を占めるのが結腸です。結腸はさらに、「上行結腸」、「横行結腸」、「下行結腸」、「S状結腸」に分けられます。

 

そして4〜6の条件が揃えば、水や朝食による胃への刺激が結腸へと伝わります。これを「胃・結腸反射」といいます。刺激が結腸に伝わると、「大蠕動(だいぜんどう)」と呼ばれる大きなぜん動運動が起こります。すると、S状結腸に滞留していた便が直腸へと押し出され、排便へと導かれます。

 

このような排便のメカニズムを考慮すると、朝排便するためには、「寝ている間に腸の内容物をしっかりと肛門方向へ移動させること」と「朝、空っぽになった胃にしっかりと刺激を与えること」が重要であると理解できます。

 

そして、この二つには睡眠中に分泌されるモチリンというホルモン(体の調子を制御する物質)が密接に関わっています。ではこのモチリンとはどのような働きをする物質なのでしょうか? モチリンの働きや特徴について以下に解説します。

 

モチリンの働きと特徴

モチリンは就寝中に約100分間隔で分泌されるホルモンです。

 

血液中のモチリン濃度が高くなると、胃と小腸に「空腹期伝播性強収縮」と呼ばれる収縮運動が起こります。難しい言葉ですが、要は「眠っている間に、胃と小腸で強い収縮運動が起こる」と理解してください。

 

※空腹期伝播性強収縮は英語で interdigestive migrating contraction と表します。そのため、頭文字をとってIMCと略されることがあります。

 

空腹期伝播性強収縮は、胃や小腸に残っている内容物(食べた物など)を大腸へと運ぶ収縮運動です。胃で起こった収縮運動がそのまま小腸に伝わるため「伝播性」という言葉が使われています。

 

そして注目して頂きたいのが「空腹期」という言葉が使われていることです。実はモチリンは空腹のときでないと十分に働きません。

 

考えてみるとこれは当たり前のことです。「空腹でないとき=胃や小腸にたくさんの食べ物があるとき」に強い収縮運動が起こってすべて大腸に移動してしまったら大変です。未消化のものやまだ栄養が吸収されていないものまで、すべて大腸へと移動することになるからです。

 

そのため、モチリンは空腹時でないと胃や小腸に十分作用しません。就寝前に食事をするとモチリンは十分に働くことができず、翌朝、胃や小腸に内容物が残った状態で目覚めることとなります。食べたあとすぐ寝ると、翌朝、胃が重くなるのはこのためです。

 

胃に内容物が残っていると、起床時にコップ一杯の水を飲んだり、朝食をしっかり食べたりしても、胃への刺激が伝わりにくくなってしまいます。そのため、胃・結腸反射が弱くなり、大蠕動が起こりにくくなってしまいます。これが「寝る前に食べると便秘になりやすい理由」です。

 

なおモチリンは、消化酵素や消化管ホルモンの分泌を促しながら、空腹期伝播性強収縮を起こして胃と小腸の内容物を大腸へと移動させます。

 

つまりモチリンは、「胃と小腸の中を整理して次の食事に備える」という働きを担っているのです。このことから、モチリンは「housekeeper of the gut (消化管の清掃係)」と呼ばれます。

 

今回述べてきたように、朝排便するためには夜のうちに消化管内容物を肛門方向へ移動させ、胃を空っぽにしておく必要があります。そして、そのためにはモチリンをしっかり働かせることが重要です。

 

モチリンは空腹時でないと十分に作用しないため、「就寝の3時間以上に食事を済ませる」ということが推奨されています。このような「モチリンが十分に働く条件」をしっかり理解することが、便秘解消に繋がります。今回ご紹介した内容を日々の生活に取り入れて、便秘解消にぜひ役立ててください。

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