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抗生物質起因性出血性大腸炎(AAHC)の特徴と発症メカニズム

抗生物質起因性出血性大腸炎(AAHC)の特徴と発症メカニズム

抗生物質は腸の中にいる善玉菌も殺してしまうため、服用することによって腸内細菌バランスが崩れることがあります。そして、その結果発症してしまう病気を総称して菌交代症といいます。

 

代表的なものに、クロストリジウム・ディフィシル感染症、抗生物質起因性出血性大腸炎、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌腸炎などがあります。ここでは抗生物質起因性出血性大腸炎の特徴と発症メカニズムについて解説していきたいと思います。

 

なお、抗生物質起因性出血性大腸炎という名称は長いため、AAHCと略されことがあります。ここでもそのように略して記載します。

 

※ AAHC: 抗生物質起因性出血性大腸炎を表す英語“antibiotic-associated hemorrhagic colitis” の略

 

AAHCの症状と発生状況

細菌は、細胞壁というものを作って、自分たちの体の周りを囲っています。これは人で例えるなら皮膚のようなものです。そのため、細胞壁を作れないようにする薬を作用させると、細菌は生育することができません。

 

このように、「細菌が細胞壁を作るのを阻害する」というメカニズムで殺菌作用を示す抗生物質があります。それが、ペニシリン系セフェム系と呼ばれる抗生物質です。

 

AAHCは、このペニシリン系あるいはセフェム系抗生物質を服用した数日後に発症することが多いです。つまり、服用して数日後に、これらの抗生物質に耐性を示す(=抗生物質が効かない)細菌が、腸の中で異常に増殖して、腸内細菌バランスが崩れることによって発症します。

 

主な症状として、突然の腹痛やトマトジュースのような血液の混じった下痢があります。発熱する場合もありますが、たいていは37℃台で、高熱となることはありません。そのため、命の危険が迫るような重篤な症状に発展することもありません。

 

ほとんどの場合、原因となっている抗生物質の使用を中止すれば、症状が改善するため、対処することもそれほど難しくありません。

 

また、最近ではペニシリン系抗生物質の使用機会が徐々に減少してきているため、AAHC患者数も減少傾向にあります。2000年以降は特に減少しています。

 

このように、AAHCは菌交代症の中では比較的症状が軽く、患者数も減少しているため、他の菌交代症ほど注意が必要というわけではありません。

 

ただ、他の菌交代症では原因菌が明らかにされているのに対し、AAHCに関しては長年、原因菌が見つけられませんでした。そして、2006年についに原因菌が発見されました。これにより、その後研究が進み、腸炎発症のメカニズムが解明されました。

 

AAHCの原因菌と発症メカニズム

2006年、AAHCの原因となる腸内細菌が発見され、「New England Journal of Medicine」という臨床医学系の一流科学雑誌に論文が掲載されました。

 

原因菌として発見された腸内細菌は、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)という細菌でした。この細菌は、肺炎や尿路感染症という疾患の原因菌であるクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)の仲間です。このように、クレブシエラ属の細菌には病原性を示すものが多いです。

 

また、クレブシエラ・オキシトカは、β-ラクタマーゼという酵素を作っていることも分かりました。この酵素はペニシリン系やセフェム系の抗生物質を分解して無効化してしまう酵素です。

 

つまり、クレブシエラ・オキシトカはβ-ラクタマーゼを作ってペニシリン系やセフェム系の抗生物質を分解するため、これらの抗生物質が効きません。一方、周りにいる他の腸内細菌はこれらの抗生物質によって死んでしまいます。そのため、腸の中にはクレブシエラ・オキシトカが異常に増えることとなるのです。

 

また、その後も研究が続けられ、さまざまなことが解明されました。AAHC患者の腸内では、健康な人の10万倍のクレブシエラ・オキシトカがいることも判明しました。

 

さらに、クレブシエラ・オキシトカが、チリバリンという毒性物質を産生していることも明らかになりました。この物質は、腸の細胞内でDNAに作用して、細胞死を誘発します。

 

以上のことをまとめると、以下のようなメカニズムでAAHCが発症することが分かりました。

 

1. ペニシリン系あるいはセフェム系抗生物質の服用
2. これらの抗生物質に耐性のあるクレブシエラ・オキシトカが腸の中で10万倍に増殖
3. 増殖したクレブシエラ・オキシトカが毒性物質チリバリンを産生
4. チリバリンが腸の細胞死を引き起こす
5. 腹痛、血液の混じった下痢が発症

 

※ただし、AAHC患者の中にはクレブシエラ・オキシトカが原因ではないケースもあります。その場合は別の細菌が原因と考えられます。

 

このように、研究の進展に伴い、AAHCの原因菌や発症メカニズムが解明されました。

 

AAHCの原因物質として発見されたチリバリンという毒素はそれほど毒性の強い物質ではありません。そのためか、AAHCが重症化することはありません。しかし、もっと毒性の強い物質が大量に作られた場合は、重篤な症状に発展する可能性があります。

 

そうならないためにも、抗生物質使用時は医師の指示に従うことが重要です。そして、もし菌交代症のような症状が現れた場合には、すぐに医師に伝える必要があります。そうすることにより、重症化する前に対処することができます。

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