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クローン病の発症に関係している腸内細菌

クローン病の発症に関係している腸内細菌

クローン病とは、消化管のところどころに潰瘍が生じる炎症性腸疾患です。

 

※ 潰瘍(かいよう):消化管の表面を覆っている粘膜が、炎症を起こして剥がれ落ちること。
※ 炎症性腸疾患:腸の炎症が慢性的に続く病気。クローン病と潰瘍性大腸炎がこれに該当します。

 

この病気は完治する治療法が確立されておらず、厚生労働省から特定疾患(≒難病)に指定されています。

 

ただ、さまざまな研究から、クローン病の発症や症状緩和に腸内細菌が関与していることが明らかとなっています。そこで今回は、クローン病の発症に関与していると思われる腸内細菌について述べていきます。

 

ヨーネ菌(Mycobacterium paratuberculosis)の関与

ヨーネ菌(Mycobacterium paratuberculosis)という病原性細菌が、クローン病の発症に関与していることが指摘されています。

 

ヨーネ菌は家畜の伝染病であるヨーネ病の原因菌として知られています。ヨーネ病を発症した家畜では、消化管全体に慢性炎症が生じ、下痢や血便といった症状が現れます。また、消化管全体に潰瘍を生じることもあります。

 

このように、ヨーネ病の病態はクローン病に類似しています。そのため、この細菌がクローン病の原因菌ではないかと考えられているのです。

 

この細菌とクローン病患者との関係を調べた調査があります。その調査によると、クローン病患者40名中26名(65%)に、潰瘍性大腸炎患者23名中1名(4%)に、健康な人40名中5名(13%)に、この細菌が見つかりました。

 

このように、クローン病患者の腸内においてこの細菌が多く見つかっているのです。

 

ただ、見方を変えると、クローン病患者であっても35%の患者ではこの細菌は見つかっていません。また別の研究では、クローン病だからといってこの細菌が多いわけではない、という結論を出している研究報告もあります。

 

このように、ヨーネ菌がクローン病の原因菌かどうかについては、その真偽を巡って、今なお議論されています。

 

ただ、最近になって、「ヨーネ菌は原因菌ではない」という否定的な意見も目立ちます。反対に、有力な候補として挙げられているのが、以下に示す接着性侵入性大腸菌です

 

接着性侵入性大腸菌の関与

接着性侵入性大腸菌という種類の病原性大腸菌がいます。

 

この大腸菌は、名前から推測できる通り、粘膜の中に侵入してくる性質があります(通常、粘膜にはバリア機能があり、細菌の侵入を抑えています)。そして、粘膜の中で増殖したり人の細胞に作用して炎症を起こさせたりします。

 

さらに、クローン病患者の病変部位にはこの大腸菌が多数存在することも確認されています。

 

このような調査結果から、「接着性侵入性大腸菌が粘膜に進入すること」がクローン病発症の原因ではないかと考える研究者もいます。

 

実際にフランスにある某製薬会社では、この接着性侵入性大腸菌に着目して、クローン病治療薬の研究開発を行っています。

 

その会社では、この大腸菌が粘膜に侵入できないようにする物質を発見しています。そして、この物質によるクローン病治療効果を検証しているのです。

 

このように、接着性侵入性大腸菌はクローン病の原因菌として有力と考えられています。

 

フソバクテリウム・ヌクリータムの関与

フソバクテリウム・ヌクリータム(Fusobacterium nucleatum)という悪玉菌もクローン病の原因菌として候補に挙げられています。この細菌は、潰瘍性大腸炎(大腸に慢性的な炎症を生じるクローン病類似の病気)の原因菌として有力なフソバクテリウム・バリウム(Fusobacterium varium)という細菌の仲間です。

 

フソバクテリウム・ヌクリータムにも粘膜に侵入する性質があります。また、クローン病患者では約60%の人の腸管内にこの細菌が見つかっています。

 

潰瘍性大腸炎における原因菌の仲間であることと、腸粘膜の中に侵入できる性質があることを考慮すると、この細菌もクローン病の原因菌である可能性はあります。

 

このように、いくつかの腸内細菌がクローン病の発症に関与していることが知られています。一方で、腸内細菌だけでなく、遺伝的な要因もあることが指摘されています。

 

クローン病の遺伝的要因

上記の細菌は、健康な人のお腹の中にいる場合もあります。したがって、この細菌が腸に定着しているからといって、全ての人がクローン病を罹患するというわけではありません。

 

クローン病においても潰瘍性大腸炎と同じように、「遺伝的な要因」の関与が指摘されています。そして、遺伝的な要因によって粘膜防御機能が弱まり、病原菌が粘膜へ侵入することを許してしまいます。

 

粘膜へ侵入した細菌は腸の細胞に作用して、慢性的な炎症を引き起こすことでクローン病を発症させていると予想されます。

 

ここまでをまとめると、以下のようなメカニズムでクローン病が発症するのではないかと考えられます。

 

1. 遺伝的な要因により、粘膜の防御機能が弱まる
2. 接着性新入生大腸菌などの原因菌が粘膜に侵入する
3. 原因菌が腸の細胞に作用して、炎症を引き起こす
4. 潰瘍が生じる

 

遺伝的要因による粘膜防御の崩壊がきっかけとなるためか、家族に潰瘍性大腸炎の罹患者がいると、潰瘍性大腸炎やクローン病の発症リスクが高まると言われています。

 

ここまで述べてきたように、腸内細菌がクローン病の原因となっている可能性はかなり高いです。

 

一方、これ以外の原因として、「異常な免疫反応が慢性的に続くこと」が病気の発症や悪化に関与しているのではないか、とも考えられています。

 

免疫反応とは、「体内に侵入してきたウィルスや細菌などの異物を排除するための防御機能」です。この免疫反応に異常が生じて、自分の腸の細胞が傷つけられている可能性があります。そして、この状態が慢性的に続くことで、クローン病の発症に繋がると考えられています。

 

このように、クローン病の発症に関してはさまざまな原因が挙げられており、完全には解明されていません。しかし、発症に関与している腸内細菌はいくつか発見されています。また、免疫の関与も徐々に解明されています。遠くない将来、発症メカニズムが解明され、完治に繋がる治療法が確立されることを期待しています。

 

また、病気の治療よりもまずは予防が重要であることは言うまでもありません。そのためにも、普段の生活の中で腸内環境を整えておくことが重要です。そうすることで、クローン病の罹患リスクを下げられる可能性があります。

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