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クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)の特徴と発症メカニズム

クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)の特徴と発症メカニズム

抗生物質は腸の中にいる善玉菌も殺してしまうため、服用することによって腸内細菌バランスが崩れることがあります。そして、その結果発症してしまう病気を総称して菌交代症といいます。

 

代表的なものに、クロストリジウム・ディフィシル感染症、抗生物質起因性出血性大腸炎、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌腸炎などがあります。ここではクロストリジウム・ディフィシル感染症の特徴と発症メカニズムについて解説していきます。

 

なお、クロストリジウム・ディフィシル感染症はCDI と略されるので、ここでもそのように略して記載します。

 

※ CDI: クロストリジウム・ディフィシル感染症を表す英語“Clostridium difficile infection” の略

 

CDIの症状と発生状況

手術後の抵抗力が落ちている時や、免疫抑制剤という種類の薬を使用している場合に、抗生物質を服用するとCDI を発症することがあります。

 

かつてはリンコマイシン系抗生物質という種類の抗生物質が主な原因と考えられていました。この抗生物質は、「細菌が生育するために必要となるタンパク質の合成を阻害する」というメカニズムで抗菌作用を示す薬です。しかし、他の抗生物質でもほぼ同等にCDI が発症することから、リンコマイシン系抗生物質が原因とは言われなくなりました。

 

そして今では、複数の抗生物質を使用していたり、多種類の細菌に効く抗生物質を使用していたりすると、CDI の発症リスクが上がると考えられています。

 

主な症状として、下痢、粘性のある便、吐き気、発熱などがあります。また、偽膜(ぎまく)と呼ばれる、黄白色の斑点が大腸内に広がることがあります。これを偽膜性大腸炎と呼びます。

 

偽膜性大腸炎となった場合はかなり重症化しています。そして、腸壁に穴が空く「腸管穿孔」を引き起こすこともあります。また、敗血症や髄膜炎を引き起こして、最悪の場合は死に至ります。

 

実際にアメリカでは、毎年約50万人がCDI を患い、3〜5万人が亡くなっているため、大きな問題となっています。

 

また、「手術後の抗生物質使用」や「免疫抑制剤と抗生物質との併用」が主な発症原因となるため、ほとんどのCDI 患者は入院中に発症します。外来患者で発症することもありますが、入院患者と比べると発生頻度は極端に低いです。そのため、院内感染にも注意が必要となります。

 

治療には、細菌の細胞壁合成を阻害する「バンコマイシン」という抗生物質や、細菌のDNAを傷害する「メトロニダゾール」という抗生物質が使用されます。しかし、満足な治療効果があるとは言いがたい状況です。

 

※ 細菌は細胞壁というものを作って、自分たちの体の周りを囲っています。この細胞壁を作れないと細菌は生育することができません。

 

さらに、一時的に治癒したように見えても、すぐに再発してしまうという特徴があるため、患者のみならず多くの医療関係者を悩ませる深刻な病気です。

 

このように、深刻な状態を引き起こすCDI ですが、その原因菌とそれが作り出す毒素については明らかにされているので、以下に解説します。

 

CDIの原因菌と発症メカニズム

病名から推測できるとおり、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)という細菌が腸内で異常増殖することが原因です。

 

この細菌は芽胞(がほう)と呼ばれるバリアを体の周りに形成するという特徴があります。この芽胞があるため、クロストリジウム・ディフィシルは、抗生物質や消毒用アルコールが存在する環境下でも殺菌されることなく、じっと耐えることができます。

 

そして、抗生物質がなくなると再び活発に活動をし始めるのです。バンコマイシンやメトロニダゾールを用いた治療法でもあまり効果がないのは、同じように芽胞を作ってじっと耐えているからです。

 

この細菌はトキシンAとトキシンBと呼ばれる2つの毒素を産生します。これらの毒素が腸管内の細胞に作用して、細胞死を誘発したり、大腸粘膜を傷害したりすることが知られています。

 

以上のことをまとめると、CDI 発症メカニズムは以下のようになります。

 

1. 抵抗力が落ちている時や免疫抑制剤を使用している時に、抗生物質を使用
2. 抗生物質に耐性のある(=抗生物質が効かない)クロストリジウム・ディフィシルが腸内で増殖
3. 増殖したクロストリジウム・ディフィシルがトキシンAやトキシンBという毒素を産生
4. これらの毒素が腸の細胞死や粘膜障害を引き起こす
5. 場合によっては大腸粘膜上に偽膜を形成する
6. 下痢、粘性のある便、吐き気、発熱などを発症する

 

発症メカニズムが解明されたことから、さまざまな新しい治療法が開発されています。しかし、細菌側も変化しており、トキシンA、Bとは異なる毒素を産生する強毒性のクロストリジウム・ディフィシルも見つかっています。

 

このように、CDI は最も重篤な菌交代症の一つです。新しい治療法が開発されているのは事実ですが、重症化を防ぐことがなにより重要です。

 

そのためにも、入院中に抗生物質を使用する際は、医師の指示に従うことが重要です。また、もし症状が現れた場合には、すぐに医師に伝える必要があります。そうすることによって、重症化する前に対処することができます。

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