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大腸がんが増加している理由:食の欧米化と腸内細菌の関与

大腸がんが増加している理由:食の欧米化と腸内細菌の関与

日本人の死因は1981年以降、がんが1位となっています。実際、日本人の2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで亡くなるといわれています。

 

死因となるがんの種類は時代とともに変化しています。がん種別で比較すると、1990年頃までは男女ともに胃がんが最も多かったです。これには、漬物や味噌などの伝統的和食に多く含まれる塩分が影響していました。

 

ところが時代とともに、肺がん、肝臓がん、大腸がんが増加してきました。2005年には女性のがん種別死亡者数は、大腸がんが胃がんを上回って1位になりました。男性では、肺がん、胃がんについで大腸がんが3位となっています。

 

これは死亡者数の比較ですが、患者数では大腸がん患者が最も多くなっています(2015年 国立がん研究センター発表)。

 

このように、日本において大腸がんは増加傾向にあります。そこで今回は、「大腸がんが増加している理由」、「大腸がんと腸内細菌の関係」、「大腸がんの予防策」について述べていきます。大腸がんの予防は健康長寿にも繋がるので、ぜひ参考にしてみてください。

 

大腸癌が増えている背景には「食の欧米化」がある

昔は日本人のがんといえば「胃がん」が1位でした。実はアメリカも同じです。1920年代以前は、アメリカでも胃がんが1位だったのです。

 

その理由は、肉の保存のために塩漬けが行われていたことです。そのため、肉を食べるときに塩分が過剰に摂取されていたのです。

 

冷蔵庫が普及すると塩漬けの必要はなくなり、いつでも肉を食べられる状態になりました。そして、高脂肪・高タンパク質の食生活が日常的に繰り返されるようになり、大腸がんが急増したのです。

 

日本は、アメリカと同じ道をたどろうとしています。いうまでもなく、日本の食生活は数十年前から欧米化しています。子どもの好きなおかずには必ずハンバーグが挙げられますし、私自身もとんかつと唐揚げが好きです。

 

ただ、脂肪やタンパク質の過剰摂取は大腸がんリスクを高めることになります。このことは腸内細菌の研究からすでに証明されています。

 

腸内細菌が作る物質が大腸癌を招く

ここからは、高脂肪食が大腸がんリスクを高めるメカニズムについて述べていきます。これを理解するためには、脂肪の消化・吸収に関わる「胆汁(たんじゅう)」という消化液について知る必要があります。

 

<胆汁の働き>

  • 胆汁は脂肪の消化・吸収を助ける消化液です。食事の刺激が伝わると、胆汁は十二指腸(胃と小腸の間にある臓器)に分泌されます。
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  • 胆汁に含まれる「胆汁酸」という成分は十二指腸で脂肪と反応します。それによって脂肪は水と混ざりあうようになります。この作用を「乳化」といいます。
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  • 乳化された脂肪は、脂肪分解酵素であるリパーゼの作用を受けて分解されます。

 

続いて胆汁の体内における循環について簡単に説明します。

 

<胆汁の循環>

  • 胆汁は十二指腸に分泌された後、食べたものと一緒に小腸を通過します。
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  • 小腸の末端部分で一部の胆汁が吸収されます。小腸で吸収されたものは門脈と呼ばれる血管を通って肝臓に送られます。これを「腸肝循環」と呼びます。
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  • 小腸末端で吸収しきれなかった胆汁は大腸まで到達します。

 

このように、胆汁の一部は大腸にたどり着きます。そして、大腸に到達した胆汁が大腸がんに関与するのです。

 

上述のとおり、胆汁には胆汁酸という成分が含まれます。大腸に到達した胆汁酸は特定の腸内細菌によって、二次胆汁酸という成分に変換されます。

 

この二次胆汁酸に含まれるデオキシコール酸という物質が発がん促進物質として働くのです。

 

※ 発がん促進物質:単独では発がん作用はありません。ただ、他の発がん物質が共存すると、その発がん作用を増強させる性質があります。

 

つまり、「脂肪の摂取 → 胆汁の分泌 → 胆汁が大腸へ到達 → 腸内細菌が胆汁からデオキシコール酸を産生」という流れで、デオキシコール酸が作られるのです。

 

大腸癌を予防するためにできること

上述の通り、大腸がんにはデオキシコール酸という物質が関わっています。そのため、この物質が作られないようにすることが重要です。

 

デオキシコール酸の生成を抑えるためには脂肪の過剰摂取を避けるようにましょう。脂肪摂取量が多いほど、胆汁の分泌量も増えるため、大腸でのデオキシコール酸の量が増えてしまいます。

 

またタンパク質の過剰摂取を避けることも重要です。なぜなら、デオキシコール酸を作る腸内細菌が増える可能性があるからです。

 

デオキシコール酸を作る腸内細菌は以下に示した腸内細菌です。

 

・クロストリジウム・ソルデリー(Clostridium sordellii)
・クロストリジウム・ヒラノーニス(Clostridium hyranonis)
・クロストリジウム・ハイレモンアエ(Clostridium hylemonae)
・クロストリジウム・レプタム(Clostridium leptum)
・クロストリジウム・シンデンス(Clostridium scindens)
・クロストリジウム・バイファーメンタンス(Clostridium bifermentans)

 

見てわかる通り、すべてクロストリジウム属という種類に分類される細菌です。一般的に、高タンパク質食は腸内のクロストリジウムを増やすといわれています。そのため、タンパク質の過剰摂取を続けていると、これらの6菌種も増加する可能性が高くなります。

 

以上のように、大腸がん増加の背景に「食の欧米化」があります。ただ、高脂肪食を避けることで、発がん促進物質の原料となる胆汁の分泌量を減らすことができます。さらに高タンパク質食を控えることで、発がん促進物質を作る腸内細菌の増殖を抑制できる可能性があります。

 

ただ、あまり気にしすぎてストレスを感じるのもよくありません。あくまで「過剰摂取を控える」という認識で構いません。実際、私もとんかつや唐揚げはしばしば食べます。普段からヨーグルトや食物繊維を摂取して腸内環境を整えておけば、過度に気にする必要はありません。

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