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ビフィズス菌の摂取により過敏性腸症候群(IBS)の症状は軽減する

ビフィズス菌の摂取により過敏性腸症候群(IBS)の症状は軽減する

過敏性腸症候群とは、通常の検査では身体的な異常が見つからないにも関わらず、腹痛や下痢、便秘などの症状が慢性的に続く病気です。

 

日常的なストレスが原因であることが多いため、神経質な人、真面目な人、責任感の強い人が罹患しやいです。また、感染性腸炎(細菌やウィルスの感染が原因で生じる腸炎)や偏った食事が原因となることもあります。

 

過敏性腸症候群と腸内細菌との関係についてはさまざまな研究が行われています。そして、善玉菌の代表格であるビフィズス菌を摂取することで、症状が緩和する傾向があるということもわかってきました。

 

そこで今回は、過敏性腸症候群と腸内細菌との関係について解説していきたいと思います。またビフィズス菌の効果や摂取する際の注意点についても述べていきます。これらを把握しておくことにより、症状を緩和するためのポイントが理解できるようになります。

 

なお、過敏性腸症候群はIBSと略されることが多いので、このページでもそのように略して記載します。

 

※ IBSは「過敏性腸症候群」を意味する “irritable bowel syndrome” の略です。

 

過敏性腸症候群(IBS)における腸内細菌の特徴

IBSの研究で著名な福土 審(ふくど しん)という先生がいます。先生の研究によって、IBS患者の腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう:腸内細菌全体のバランスのこと)は、健康な人とは異なることが示されています。

 

具体的には、IBS患者では、健康な人と比べてビフィズス菌が減っていることがわかりました。一方、乳酸菌の一種であるラクトバチルス(Lactobacillus)という細菌と、口腔内細菌としても知られるベイロネラ(Veillonella)という細菌が増加していました。

 

ベイロネラは乳酸を利用して生育する細菌です。そのため、おそらくラクトバチルスが産生する乳酸を利用して、増殖していると考えられます。

 

このようなことから、IBSの発症には腸内細菌が何らかの影響を及ぼしていることが分かります。特に善玉菌の代表格であるビフィズス菌が減少していることは特徴的です。そのため、腸内環境を整えるためには、ビフィズス菌を補うことが効果的であると考えられます。

 

次に、IBS患者にビフィズス菌などの善玉菌を飲ませて効果を検証した例について紹介していきます。

 

過敏性腸症候群(IBS)にはビフィズス菌が有効

IBS患者に善玉菌を飲ませて効果を調べた研究は複数あります。

 

そして、それらの研究結果から総合的に判断すると、「ビフィズス菌のほうが乳酸菌よりも症状緩和に有効な場合が多い」と考えてよいと思います。

 

例えば、IBS患者25名にラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)という乳酸菌を飲ませることで症状が改善したという論文報告があります。しかし、その逆に、同じ細菌を飲ませた場合でも効果はなかったという論文もあります。このように乳酸菌の効果については、判断が難しいケースがあります。

 

(参考文献: Am J Gastroenterol, 2000, 95, 1231、Dig Dis Sci, 2002, 47, 2615)

 

一方で、ビフィズス菌の場合は有効な結果が得られた症例が多いです。

 

例えば、IBS患者75名を3つの組に分け、ビフィズス菌であるビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、乳酸菌であるラクトバチルス(Lactobacillus)、そしてプラセボ(偽物の薬)をそれぞれの組に飲ませました。そして、それぞれの効果を検証したところ、ビフィドバクテリウムを飲ませた場合にのみ症状が改善することが判明しました。

 

(参考文献: Gastroenterology, 2005, 128, 541)

 

このように、ビフィズス菌のほうが乳酸菌よりも有効であるケースが多いです。そのため、腸内環境を整えて症状を緩和するためにも、ビフィズス菌の摂取は効果的です。ただ、一つだけ注意点があります。それは、ヨーグルトからの摂取は控えめにしたほうがよいということです。

 

なぜなら、ヨーグルトには乳糖と呼ばれる糖類が含まれているからです。乳糖は小腸で消化・吸収されにくく、大腸まで届きます。そして、大腸内で発酵されてガスを生じるため、腹部膨満感をはじめとする腹部の不快感に繋がってしまいます。そのため、ビフィズス菌を摂取する場合は、サプリメントなどを利用したほうがよいです。

 

このように、IBSの症状には腸内細菌が関与しています。また、善玉菌の種類で比較すると、乳酸菌よりもビフィズス菌のほうが症状緩和に有効な場合が多いです。ただ、ビフィズス菌を摂取する際は、ヨーグルトではなくサプリメントを利用したほうがよいということには注意が必要です。

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