腸内細菌研究者がお届けする『腸』役立つ健康メソッド

ビフィズス菌や酪酸菌などの善玉菌は潰瘍性大腸炎の症状を改善する

ビフィズス菌や酪酸菌などの善玉菌は潰瘍性大腸炎の症状を改善する

潰瘍性大腸炎とは、直腸(大腸の最後の部分=肛門の手前)付近から小腸の方向に潰瘍やびらんが切れ目なく広がる炎症性腸疾患(腸の炎症が慢性的に続く病気)の一つです。

 

※ 潰瘍(かいよう):消化管の表面を覆っている粘膜が、炎症を起こして剥がれ落ちること。
※ びらん:粘膜が荒れること。潰瘍よりは軽症です。
※ 潰瘍性大腸炎は英語で “ulcerative colitis” と表します。そのため、UCと略されることもあります。

 

この病気は完治する治療法が確立されておらず、厚生労働省から特定疾患(≒難病)に指定されています。

 

また、この病気の特徴として、大腸に炎症が生じて症状が表れる「活動期」と、炎症が治まっている「寛解期」が繰り返されます。そのため、症状が治まったからといって安心することはできません。

 

これまでの研究から、潰瘍性大腸炎の発症や症状緩和に腸内細菌が関与していることが明らかとなっています。そこで今回は、潰瘍性大腸炎に有効であることが示されている腸内細菌の例を紹介します。これを把握することで、病気の予防や症状改善に役立てることができますので、ぜひ参考にしてみて下さい。

 

善玉菌による寛解導入効果

上述の通り、潰瘍性大腸炎は活動期と寛解期を繰り返す疾患です。そして、善玉菌には活動状態を緩和し、寛解状態に移行させる効果があります。これを寛解導入効果といいます。ここでは、善玉菌による寛解導入効果を検証した例について紹介します。

 

例1
5種類の乳酸菌と3種類のビフィズス菌を粉末化したVSL#3という薬があります。

 

活動期の潰瘍性大腸炎患者34名にVSL#3を6週間飲ませた臨床研究では、18名(53%)の患者が寛解状態になりました。また、8名(24%)の患者は寛解には至りませんでしたが、症状が改善しました。

 

このように、VSL#3には寛解導入効果があります。

 

例2
ディフェンシンという抗菌物質を産生する非病原性大腸菌Nissle1917という大腸菌がいます(一般的に大腸菌は悪玉菌に分類されますが、この細菌は例外的に善玉菌です)。

 

そして、この大腸菌を活動期の潰瘍性大腸炎患者に飲ませることで、治療薬であるメサラジンという薬と同等の寛解導入効果が得られました。つまり、大腸菌Nissle1917にも寛解導入効果があります。

 

例3
2種類のビフィズス菌と1種類の乳酸菌を含む発酵乳を活動期の潰瘍性大腸炎患者に飲ませることで、症状が改善し、寛解導入効果が得られることが示されています。

 

つまり、ビフィズス菌と乳酸菌の発酵乳にも寛解導入効果があります。

 

例4
臨床研究ではなく、実験動物を用いた研究報告も複数あります。そのうち、国内の著名な消化器内科医である慶応大学・金井先生の研究内容を簡単に紹介します。

 

金井先生は、酪酸菌の一種であるクロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)という細菌に腸炎抑制効果があることを示しました。

 

その際、詳細な解析を行うことによって、この細菌が人の免疫細胞に働きかけて、インターロイキン10という炎症抑制作用のあるタンパク質を作らせていることを発見しました。そして、このインターロイキン10の働きにより、腸炎が抑制されることを証明したのです。

 

この研究成果は、2013年に一流科学雑誌「Cell Host & Microbe」に掲載されています。

 

このように、善玉菌による寛解導入効果については多数の研究成果が報告されています。

 

一方で、「善玉菌による寛解導入効果はない」という論文報告もあります。例えば、潰瘍性大腸炎患者に、ビフィズス菌であるビフィドバクテリウム・インファンティス(Bificobacterium infantis)や乳酸菌であるラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)を飲ませても効果が得られなかったという論文報告もあります。

 

このように、中には例外もありますが、基本的にビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌などの善玉菌には、腸炎を抑制し、寛解期への移行を促す効果があることが複数の研究から明らかになっています。

 

では次に、善玉菌による発症予防効果について述べていきます。

 

善玉菌による寛解維持効果

善玉菌には寛解導入効果だけでなく、寛解状態を維持して再燃(再び炎症が起こること)を予防する効果もあります。これを寛解維持効果といいます。

 

潰瘍性大腸炎患者における活動期⇔寛解期の周期は、個人差もありますが、半年〜1年ぐらいです。寛解期にある患者さんのうち、約7割が1年以内に再燃するといわれています。

 

そこで、VSL#3の寛解維持効果を検証した臨床研究があります。その研究によると、1年後の寛解維持率は75%でした。つまり、再発率を25%に抑制することができたのです。

 

同様の研究は他にもあります。上述の非病原性大腸菌Nissle1917や乳酸菌の一種であるラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)が、治療薬であるメサラジンと同等の寛解維持効果を示すことが報告されています。

 

このように、善玉菌には寛解期を維持し、発症を予防する効果もあるのです。

 

今回述べてきたように、ビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌などの善玉菌は、潰瘍性大腸菌の寛解導入や寛解維持に効果的であることが多くの研究で示されています。

 

潰瘍性大腸炎は、一度罹患すると完治が難しく、寛解状態を維持するために薬を飲み続ける必要がある疾患です。そのため、病気の予防が極めて重要となります。今回述べてきたことを参考に、普段から善玉菌を摂取して腸内環境を整えておくことで、病気の予防を心がけましょう。

管理人が厳選したおすすめサプリメント



腸内環境の改善には「食生活」と「生活習慣」を見直すことが重要です。ただ、サプリメントで手軽に済ませたいという要望があるのも事実です。

こちらのページでは、私が厳選したおすすめのサプリメントを紹介しています。

関連ページ

抗生物質使用時に注意が必要な菌交代症
抗生物質起因性出血性大腸炎(AAHC)の特徴と発症メカニズム
クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)の特徴と発症メカニズム
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌腸炎(MRSA腸炎)の特徴と発症メカニズム
驚異の治療法「便移植」がクロストリジウム・ディフィシル感染症克服の鍵
便移植が開拓する新たな治療戦略
腹痛・下痢・便秘などの症状で現代人を悩ませる過敏性腸症候群(IBS)
急性胃腸炎が過敏性腸症候群(IBS)の原因となることもある
ビフィズス菌の摂取により過敏性腸症候群(IBS)の症状は軽減する
過敏性腸症候群(IBS)の症状緩和に有効な食事
特定疾患に指定される潰瘍性大腸炎の特徴
潰瘍性大腸炎の発症に関係している腸内細菌
特定疾患に指定されるクローン病の特徴
クローン病の発症に関係している腸内細菌
クローン病における善玉菌の効果
炎症性腸疾患の発症や治療に関係している炎症性サイトカイン
炎症性腸疾患における治療戦略
酪酸菌による免疫抑制作用は炎症性腸疾患の症状を緩和する
クロストリジウムの中には炎症性腸疾患に有効な細菌がいる
大腸がんが増加している理由:食の欧米化と腸内細菌の関与
大腸がんの原因物質「コリバクチン」と大腸がんの予防
便潜血検査の方法と陽性判定が出たときの考え方
血便が出る原因と対処法

ホーム RSS購読 サイトマップ
HOME お問い合わせ サプリメント