腸内細菌研究者がお届けする『腸』役立つ健康メソッド

衛生仮説:清潔な環境がアレルギー疾患の原因になることもある

衛生仮説:清潔な環境がアレルギー疾患の原因になることもある

ここに一つのグラフがあります。これは1900年代後半の「結核あるいは寄生虫に感染した人数」と「アレルギー疾患にかかる人の割合」を表したものです。

 

 

このグラフから、結核菌などの感染症にかかる人が減るに連れて、アレルギー疾患の患者が増えてきたことが分かります。

 

これには何か理由があるのでしょうか?

 

今回は「衛生仮説」という仮説について解説しながら、この疑問に答えていきたいと思います。また最後に、衛生仮説に基づいたアレルギー疾患予防の実践例についても述べます。特に乳幼児がいる家庭や、赤ちゃんが生まれる予定のある女性には読んで頂きたい内容です。

 

衛生仮説とは

抗生物質やワクチンが普及するまでは、結核などの感染症によって亡くなる人が多数いました。実際1950年頃までは、インフルエンザ感染による肺炎や結核などが死因のトップでした。

 

これらの感染症を予防するために、薬やワクチンの開発だけでなく、衛生環境も格段に整備されました。

 

このような背景があるため、昔の子供と比較すると、現代の子供は環境中の微生物に触れる機会が減少しています。そして、「微生物と接触する機会の減少がアレルギー疾患の原因である」と提唱されたのが衛生仮説です。

 

これは1989年にイギリスのStrachan先生によって提唱された仮説です。現在では、一部のアレルギー疾患に対してはこの仮説が当てはまると考えられています。

 

それでは、子供の頃に微生物と接触することがなぜアレルギー疾患の予防に繋がるのでしょうか?

 

これに答えるためには免疫(体内に侵入した異物を排除するための防御機構)について理解しておく必要があります。

 

細菌の感染によりTh1細胞とTh2細胞のバランスが変化する

免疫細胞の中にはヘルパーT細胞という細胞があります。ヘルパーT細胞は、「免疫の司令塔」とも呼ばれるほど重要な細胞です。

 

体内に、細菌やウィルス、花粉などの異物が入ってくると、ヘルパーT細胞はTh1細胞Th2細胞という免疫細胞に変化します。一般的に、細菌やウィルスが体内に侵入するとTh1細胞になり、花粉や埃などが侵入した場合はTh2細胞になるといわれています。

 

このTh1細胞とTh2細胞はバランスが非常に重要です。Th2細胞が多くなりすぎるとアレルギー疾患にかかりやすいからです。逆にTh1細胞が多くなりすぎると、自分の細胞を攻撃する「自己免疫疾患(リウマチ、クローン病など)」という病気になりやすくなります。

 

そして重要なポイントとして、「新生児期は誰もがTh2細胞優位な状態にある」ということがあります。

 

ただ、普通は成長するに連れてTh1細胞が増加し、Th1細胞とTh2細胞のバランスが整っていきます。しかし、アレルギー疾患の人ではTh2細胞が優位な状態のままです。

 

そしてTh1細胞を増やす要因となるのが、上述の通り「体内に侵入した細菌やウィルス」なのです。

 

ここまでをまとめると、「@新生時期はTh2細胞が優位 → A成長の過程で体内に細菌やウィルスが侵入 → BTh1細胞が増える → CTh1細胞とTh2細胞のバランスが整う」という流れで、正常な免疫バランスになると考えられています。

 

ここまでを理解できれば、衛生仮説は、「Aの部分が不十分なため、Th1細胞とTh2細胞のバランスが取れずにアレルギー疾患になる」という仮説であることがわかります。

 

衛生仮説に基づいたアレルギー疾患の予防方法

衛生仮説は全てのアレルギー疾患に当てはまるわけではありません。

 

花粉症や小学生以降に発症する喘息などは当てはまるといわれています。また、花粉やダニなどの吸入が原因で幼児期以降に発症するアトピー性皮膚炎にも関係すると考えられています。

 

ただそれ以外のアレルギー疾患については、衛生仮説では説明できません。

 

このように衛生仮説は、すべてのアレルギー疾患に関係しているわけではありません。ただ、一部のアレルギー疾患を予防するため、衛生仮説に基づいた対策を行っている医師や研究者が実際にいます。

 

東京医科歯科大学の藤田紘一郎先生は、腸の中にサナダムシをわざと飼っていた先生です。その理由は、体内に寄生虫を取り込み、アレルギー疾患を防ぐためです。この例からもわかるように、先生はかなり極端な対策をとっています。

 

先生の親族の子供は、@主に床に落ちたものを食べる、A足の指をなめる、という生活を送っていたそうです。子供4人の例なので実例としては少ないですが、一人もアトピーや喘息にはなっていないそうです。

 

腸内細菌研究で著名な福田真嗣先生(慶応大学)はもう少しマイルドな対策を取っています。

 

先生の場合は、@食べ物を床に落としたら3秒以内に拾って食べる、A手洗いはするがアルコール消毒はしない、B殺菌力の強いうがい薬を使いすぎない、ということを実践されているそうです。

 

ここまで述べてきたように、生活の中から細菌を排除しすぎるとアレルギー疾患にかかる可能性が高くなります。特に、幼少期の生活環境は将来のアレルギー疾患に影響します。そのため、幼少期には過度に除菌されたものを使う必要はありません。極端な対策をとる必要はありませんが、可能な範囲で実践してみてください。

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