腸内細菌研究者がお届けする『腸』役立つ健康メソッド

善玉菌と食物繊維の相乗効果で肥満を予防する:短鎖脂肪酸の効果

善玉菌と食物繊維の相乗効果で肥満を予防する:短鎖脂肪酸の効果

「腸内環境を改善すると痩せやすい」とか「腸内環境が悪いと太る」といったことを聞いたことはないでしょうか? これらは基本的に正しい情報です。腸内環境が肥満に関係することは、腸内細菌研究者の間ではもはや常識となっているのです。

 

そこで今回は、腸内環境の改善が肥満防止に繋がるメカニズムについて解説していきます。また、そのメカニズムを踏まえた上で、何を食べればダイエットに効果的なのか述べていきます。肥満を予防するために、普段の食生活を見直すきっかけにしてください。

 

短鎖脂肪酸:腸内細菌が作る酢酸、プロピオン酸、酪酸

腸内環境の改善と肥満予防との関係を理解するためには、「短鎖脂肪酸」という物質について知る必要があります。そこでまずは短鎖脂肪酸について説明していきます。

 

短鎖脂肪酸は「酢酸」「プロピオン酸」「酪酸」という物質の総称です。酢酸は「酢」という文字からもわかる通り、お酢に含まれる成分です。そしてプロピオン酸と酪酸は酢酸の仲間です。

 

下記にそれぞれの化学式を示しましたが、プロピオン酸も酪酸も酢酸に似ていることがわかると思います。

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これらの短鎖脂肪酸は、腸内細菌によって食物繊維から作られます。例えば、酪酸菌という種類の善玉菌はプロピオン酸や酪酸を作ります。またビフィズス菌は酢酸を作ります。さらにビフィズス菌は酪酸菌の働きを促す作用もあります。

 

またバクテロイデスという種類の細菌も短鎖脂肪酸を合成します。

 

このように、酪酸菌やビフィズス菌、一部のバクテロイデスなどが腸内で働くことによって短鎖脂肪酸は作られるのです。

 

それでは、短鎖脂肪酸はどのような作用で肥満を予防するのでしょうか? そのメカニズムについて解説していきます。

 

短鎖脂肪酸は脂肪細胞と交感神経に作用して肥満を防ぐ

腸内で作られた短鎖脂肪酸は腸壁から吸収された後、血液を介して全身を巡ります。そのとき、白色脂肪細胞交感神経に作用します。

 

白色脂肪細胞と短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸)

白色脂肪細胞とは、体中の余分な脂肪を蓄えている細胞のことです。皮下脂肪や内臓脂肪と呼ばれる脂肪組織に多く存在します。肥満の人ではたくさんの脂肪が蓄積されているため、一つ一つの白色脂肪細胞は痩せている人に比べて大きくなっています。

 

白色脂肪細胞の表面には酢酸とプロピオン酸を感知するセンサーがあります(このセンサーは専門用語で「GPR43」といいます)。

 

そして、そのセンサーが血液中の酢酸やプロピオン酸を感知すると、白色脂肪細胞は脂肪の蓄積をストップするのです。

 

つまり、「腸内細菌が酢酸やプロピオン酸を作る → 血液中の酢酸やプロピオン酸の量が増える → 脂肪細胞が酢酸やプロピオン酸を感知する → 脂肪細胞が脂肪の蓄積をストップする」という流れで、肥満予防効果が得られるのです。

 

交感神経と短鎖脂肪酸(プロピオン酸、酪酸)

交感神経とは、日中の活動中に活発に働いている神経のことです。特にスポーツや仕事などで集中しているときに強く働きます。心拍数が上がったり筋肉が緊張したりするのは、交感神経が活発に働いている証拠です。

 

そして、交感神経にも短鎖脂肪酸を感知するセンサーがあります。交感神経のセンサーは、主にプロピオン酸や酪酸を感知します(このセンサーは専門用語で「GPR41」といいます)。

 

このセンサーが血液中のプロピオン酸や酪酸を感知すると、交感神経が活発に働き始めます。その結果、心拍数が上がったり体温が上昇したりして、全身の代謝がアップします。つまり脂肪を燃焼しやすい状態になるのです。

 

このように、「腸内細菌がプロピオン酸や酪酸を作る → 血液中のプロピオン酸や酪酸の量が増える → 交感神経がプロピオン酸や酪酸を感知する → 全身の代謝アップ」という流れで、肥満解消効果が得られるのです。

 

ここまでの解説を図示すると以下のようになります。

 

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なお、短鎖脂肪酸による肥満予防のメカニズムを解明したのは日本人研究者の木村郁夫先生(2016年現在 東京農工大准教授)です。先生はこれまでに短鎖脂肪酸と肥満予防との関係について複数の論文を発表されています。

 

私は以前、木村先生と議論させて頂いたことがありますが、非常に丁寧に研究を進めてこのメカニズムを解明されていました。先生の研究には今後も注目すべきだと思っています。

 

短鎖脂肪酸を増やすための食生活

最後に、短鎖脂肪酸を増やしてダイエット効果を得るために適した食事について述べていきます。

 

基本的には腸内環境を整える「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」を食べることが重要です。

 

プロバイオティクスとは、簡単にいうと「善玉菌」のことです。ビフィズス菌や乳酸菌が含まれるヨーグルト、酪酸菌や乳酸菌が含まれるぬか漬けなどの発酵食品が該当します。上述の通り、これらの細菌は短鎖脂肪酸を作ってくれます。

 

なお、ヨーグルトを食べるときは余計な脂肪や糖質を摂取しないように無糖無脂肪タイプの製品を選ぶのが良いでしょう。

 

また、上述のとおりバクテロイデスも短鎖脂肪酸を作ってくれます。しかし、どのような食材を食べるとバクテロイデスが増えるのか明確にわかっていません。そのため、プロバイオティクスとしては上記のような食品を摂取すれば良いでしょう。

 

またプレバイオティクスとは、簡単にいうと「善玉菌のエサ」のことです。キノコや海藻などに含まれる食物繊維、果物などに含まれるオリゴ糖が該当します。

 

食物繊維の中でも特に水溶性食物繊維(水に溶ける食物繊維)は善玉菌のエサになりやすいです。そのため、水溶性食物繊維が豊富な海藻、ネバネバ系の野菜(オクラやヤマイモなど)、こんにゃく、果物などを摂り入れるのが良いでしょう。また水溶性食物繊維のサプリメントなどでも構いません。

 

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ここまで述べてきたように、腸内環境を整えることは肥満の予防や解消に有効です。特に短鎖脂肪酸がたくさん作られるような食事を心がけることで、ダイエット効果を得やすくなります。そのためにも、ここに記載したようなプロバイオティクス(善玉菌)やプレバイオティクス(善玉菌のエサ)を普段の食事で摂取するように意識しておきましょう。

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