β-グルカンの健康への影響と各国における食品への表示方法
大麦は健康増進や病気の予防に効果のある食材です。なぜなら水溶性食物繊維(水に溶ける食物繊維)である「β-グルカン」を豊富に含んでいるからです。
水溶性食物繊維は、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌のエサになります。そのため、腸内環境を整える上で大変重要な栄養素になるのです。
またβ-グルカンには、腸管内で糖質やコレステロールを吸着し、体内への吸収を抑える働きがあります。そのため、「肥満予防やダイエット」、「血中コレステロールの正常化(適度に下げる)」などの効果もあります。
このようなβ-グルカンの特徴は、日本よりも海外において一層注目されています。実際、欧米やカナダ、オーストラリアなどでは、β-グルカンを含む食品に対して、「食後血糖値の上昇を抑制する」などと表示することが国によって認可されています。
そこで今回は、国内外で認められているβ-グルカンの健康への影響について整理していきます。あなたもβ-グルカンを豊富に含む大麦などを食べて、健康的な生活を手に入れましょう。
海外各国における大麦の健康強調表示
上述の通り、β-グルカンの健康増進作用は海外において広く認識されています。
米国では、米国食品医薬品局が世界に先駆けて、大麦やオーツ麦に含まれるβ-グルカンの効果を認めました。そして2005年、大麦やオーツ麦のβ-グルカンを基準量以上含む食品に対して「疾病リスク低減」などの健康強調表示(健康への影響を食品に表示すること)を認可しました。
※ 米国食品医薬品局:通称FDA、日本の厚生労働省に該当する機関
※ オーツ麦:シリアルの原料に使われる麦の一種。大麦と同様、β-グルカンを豊富に含みます
同様に2010年以降、カナダやヨーロッパ、オーストラリアなどでもβ-グルカンの健康強調表示が認められました。つまり、β-グルカンを基準量以上含む食品に対して「コレステロールの低下」「食後血糖値の上昇抑制」「排便促進」などの効果を表示することが国によって認可されたのです。
このように、欧米諸国ではβ-グルカンの効果を国が認めています。参考までに、各国が認めた健康強調表示の一覧を以下に示します。
日本におけるβ-グルカンの健康強調表示
日本における健康強調表示はやや複雑です。日本で健康強調表示される食品としては、「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」「機能性表示食品」があります。
特定保健用食品(トクホ)
- 国が科学的根拠に基づいて、食品ごとに健康の維持増進作用について審査します。
- 国が認めれば、「コレステロールの吸収を抑える」「おなかの調子を整える」などの効果が表示されます。
- 食品ごと(=製品ごと)に審査されることがポイントです。トクホのヨーグルトがある一方で、トクホではないヨーグルトがあるのは、製品ごとに各メーカーが国に申請しているからです。
栄養機能食品
- ビタミンやミネラル(亜鉛やカルシウムなど)を基準量含む食品のことです。
- 基準量を含んでいれば、「カルシウムは、骨や歯の形成に必要な栄養素です。」のように、国が定めた表現で栄養素の効果を表示できます。
- 主にビタミンやミネラルのサプリメントが対象です。
機能性表示食品
- 2015年4月からスタートした新しい表示制度です。
- 科学的根拠に基づいて、各メーカーが自己責任で表示することが認められています。
- 国の認可は必要ありませんが、各メーカーは事前に消費者庁に届け出ておく必要があります。
現在の日本の制度では、β-グルカンを含むというだけでは、特定保健用食品(トクホ)や栄養機能食品の表示をすることはできません。
一方、各メーカーの判断により機能性表示食品として表示することは可能です。実際、2015年4月以降、国内のさまざまな食品メーカーが大麦製品に対して機能性表示を行うようになりました。β-グルカンの健康への影響について調べた数多くの論文を根拠にして、各メーカーが消費者庁に機能性表示の届け出を行っているのです。
このように、β-グルカンにはさまざま健康増進作用があります。そして海外においては、その作用は国の専門機関で認められています。特に「血中コレステロールの正常化(適度に下げる)」や「食後血糖値の上昇抑制」は数多くの研究機関で証明されています。
私も普段の食事には積極的に大麦を取り入れるようにしていますし、妻にもできるだけ大麦が含まれる献立をお願いしています。コレステロールや血糖値、体重などが気になる方は普段の食事に大麦を取り入れることを心がけてください。
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