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クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)の特徴と発症メカニズム

クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)の特徴と発症メカニズム

クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)の特徴と発症メカニズム

この記事のポイント

 

私たちのお腹の中には100兆個以上もの腸内細菌がいます。ただ、抗生物質を飲むとこれらの腸内細菌のバランスが崩れてしまいます。そして、その結果発症する病気を総称して「菌交代症」といいます。

 

代表的な菌交代症として、クロストリジウム・ディフィシル感染症、抗生物質起因性出血性大腸炎、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌腸炎などがあります。ここではクロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)の特徴と発症メカニズムについて解説していきます。

 

※ クロストリジウム・ディフィシル感染症(Clostridium difficile infection)は「CDI」と略されることが多いので、この記事でもそのように略すことにします。

 

 

クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)の症状と発生状況

CDIを発症しやすいのは、手術後の抵抗力が落ちているときや、免疫抑制剤を使用しているときなどです。このようなときに、抗生物質を服用するとCDI の発症リスクが上がります。

 

「手術」や「免疫抑制剤の使用」は主に入院中に行われます。そのため、ほとんどのCDI 患者は入院中に発症(院内感染)します。特に、複数の抗生物質や多種類の細菌に効く抗生物質を長期間使用すると、CDI の発症リスクが上がります。

 

※ かつてはリンコマイシン系の抗生物質がCDIの主な原因と考えられていました。しかし、他の抗生物質でもほぼ同等にCDI が発症することから、リンコマイシン系抗生物質が原因とは言われなくなりました。

 

CDIの主な症状として、下痢、粘性のある便、吐き気、発熱などがあります。また、偽膜(ぎまく)と呼ばれる、黄白色の斑点が大腸内に広がることがあります。このような状態を「偽膜性腸炎」といいます。

 

偽膜性腸炎

(画像は 医学のあゆみ, Vol.251, No.1, p.86より)

 

偽膜性腸炎になった場合はかなり重症化しています。さらに重症化すると、腸壁に穴が空く「腸管穿孔」を引き起こすこともあります。そして、敗血症や髄膜炎を引き起こして、最悪の場合は死に至ります。

 

実際、アメリカでは毎年約50万人がCDI を患い、3〜5万人が亡くなっているため、大きな問題となっています。

 

CDIの治療には、細菌の細胞壁合成を阻害する「バンコマイシン」や、細菌のDNAを傷害する「メトロニダゾール」などの抗生物質が使用されます。しかし、満足な治療効果は得られていません。

 

CDIには「便移植」という治療法が有効であることが判明しています。詳細は以下の記事をご覧ください。

 

<参考記事>
驚異の治療法「便移植」がクロストリジウム・ディフィシル感染症克服の鍵

 

さらに、CDIは一時的に治癒してもすぐに再発するという特徴があるため、患者のみならず多くの医療関係者を悩ませる深刻な病気なのです。

 

CDIの原因菌と発症メカニズム

病名から推測できるとおり、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)という細菌が腸内で異常増殖することでCDIは発症します。

 

クロストリジウム・ディフィシルの顕微鏡写真

(参照:ヤクルト中央研究所 菌の図鑑

 

この細菌は私たちの腸の中にいる「常在菌」です。そのため、抗生物質の使用状況によっては、誰でもCDIにかかる可能性があるのです。

 

また、クロストリジウム・ディフィシルには、芽胞(がほう)というバリアを体の周りに作る性質があります。この芽胞があるため、クロストリジウム・ディフィシルは、抗生物質や消毒用アルコールで殺菌されることなく、じっと耐えることができるのです。

 

そして、抗生物質がなくなると再び活発に活動し始めます。バンコマイシンやメトロニダゾールを用いた治療法であまり効果がないのは、この細菌が芽胞を作ってじっと耐えているからです。

 

また、クロストリジウム・ディフィシルはトキシンAとトキシンBという2つの毒素を作ります。これらの毒素が腸の細胞に作用して、細胞死を誘発したり大腸粘膜を傷害したりすることで、上述のような症状が現われるのです。

 

以上をまとめると、CDI の発症メカニズムは以下のようになります。

 

<CDIの発症メカニズム>

  1. 手術などで抵抗力が落ちているときや免疫抑制剤を使用しているときに、抗生物質を服用する。
  2. 善玉菌を含むさまざまな腸内細菌が殺菌される。しかし、芽胞を形成するクロストリジウム・ディフィシルには抗生物質が効かない。
  3. 腸の中でクロストリジウム・ディフィシルが増殖する。
  4. 増殖したクロストリジウム・ディフィシルがトキシンAやトキシンBという毒素を作る。
  5. これらの毒素が腸の細胞死や粘膜傷害を引き起こす。
  6. 下痢、粘性のある便、吐き気、発熱などの症状が現れる。場合によっては、大腸粘膜上に偽膜を形成する(偽膜性腸炎)。

 

発症メカニズムが解明されたことから、さまざまな新しい治療法が開発されています。しかし、細菌側も変化しており、トキシンAやトキシンBとは別の毒素を作る強毒性のクロストリジウム・ディフィシルも見つかっています。

 

このように、CDI はもっとも重篤な菌交代症です。新しい治療法が開発されているのは事実ですが、重症化を防ぐことがなにより大切です。

 

そのためにも、入院中に抗生物質を服用する際は、医師の指示に従うことが重要です。また、もし症状が現れた場合には、すぐに医師に伝える必要があります。そうすることによって、重症化する前に対処することができます。

 

自分で勝手に抗生物質の服用量を減らしたり、途中で服用を中止したりすると、耐性菌が生まれることがあります。薬の服用に関しては必ず医師の指示に従ってください。

 

まとめ

  • クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)は、偽膜性腸炎という重篤な症状に発展する可能性がある。そのため、CDIは菌交代症の中でもっとも注意が必要である。
  • 「手術後の抵抗力が落ちているとき」や「免疫抑制剤を使用しているとき」などに抗生物質を服用するとCDIを発症をしやすい。
  • クロストリジウム・ディフィシルは「芽胞」を作ることで、抗生物質に耐性を示す。また、トキシンAやトキシンBを作ることで、腸粘膜を傷害して下痢などを引き起こす。
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